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いわゆる一つの萌え要素の為の場所
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 長き道のりの果てに、璃緒たちはいざないの洞くつにたどり着いた。その頃にはもう太陽は大地を照らす役目を終えようとしていた。
 「ようやく着いたわね」
 「ああ、そうだな」
 「いや、まあ一回来てるんだけど」
 「それでも、なんかようやくアリアハン脱出って感じだよ~」
 思い思いに感想を述べながら遠くアリアハンのある方向を見る。一年以上住みつづけたアリアハンの街に愛着のあるカイ。そして、こちらへ来て以来ずっと生活の拠点にしてきた璃緒たち三人。それぞれがそれぞれの思い入れがあった。
 「う~ん、長かったように思えたんだけど、よく考えると二週間くらいしかいなかったんだよなぁ」
 「そうだね~。一日一日の密度が濃かったから長く感じるんだよね~」
 「色々あったからね」
 「そうだなぁ・・・ゆきぽに会い、スライムと戦い、魔法の玉を作り、ホントに濃い二週間だったなぁ。最近こんなに一日が濃密なことなんてなかったからなぁ。それで長く感じたんだろう」
 「おまえらと会ってからまだ二週間か。まあなんだかすっかり馴染んでそんなに日が浅いという感じがしないな」
 「そうね。カイとももうすっかり打ち解けたし、連携もよくなってきてるわね」
 「三人で戦ってた時から考えれば段違いだからなぁ。なんだか元々この四人で戦うためにみんなの能力が決まってたみたいだ」
 ふいに沈黙が流れる。みな、言葉に出さずに理解しあった。
 沈黙を破って璃緒が口を開いた。
 「これで当分アリアハンとはお別れね」
 「二週間いて愛着もあるが、まあこれが旅そのものだからなぁ」
 「何知った気になって言ってるのよ。まだまだ始まったばかりよ」

 一方、アリアハンのとある旅の宿。
 「二階の四人組は今日出発か。彼らの旅が無事に続きますように」
 赤字ギリギリの値段でやってるこの宿屋において、四人が二週間に渡って滞在してくれたことは大きかった。その客がいなくなることは痛手だが、と思いながらも主人は四人の旅の無事を願った。
 「そんなことよりも、だ」
 ふいに受付から立ち上がると二階に上がった。
 そして、部屋にいる息子に対して声をかける。
 「おい、お前はまだ学校へ行く気にはならないのか?」
 努めて優しく諭すような声で言った。半ば諦めているのだが、親としてわが子を見捨てるわけにはいかない。学校に行かずともよいと思わなくもないが、せめて義務教育くらいは通ったほうがよいかと思い、毎日声をかけ外に出ることを促すことを続けている。
 部屋からなんの返答もないので、諦めてもとの場所に戻る。まあ、その内なんとかなるだろう、そう思うようにして頭を切り替える主人であった。
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 アリアハンを出発した四人はレーベで小休止をとり、いざないの洞くつへ向かった。レーベより東に向かうとアリアハン東部の丘陵地になる。
 アリアハン東部の丘陵地はアップダウンが激しい。丘を登り丘を下り、長々と道が続く。昨今は人があまり訪れることがないため、そこに自生している草木が自由にその根を伸ばし、葉をひろげている。その為この辺りを訪れるものは足元の草に足を絡めとられ、歩くのに難渋する。また、生い茂る草は小さなバブルスライムの身を隠し、気付かずに毒に冒されるという危険が付きまとうことになる。いざないの洞くつへ向かう者が今まで現れなかったのは、鎖国政策によって築かれた壁だけでなく、この天然の防壁に因るところも大きいのであった。
 この丘陵地には時々林のように木々が生い茂っている箇所がある。視界が悪く、大人数での行動が制限されるため、アリアハン東部の難所となっている。かつて旅の途中で力尽きた商人や旅人たちの多くがこういった林で魔物の奇襲を受け、その命を失った。
 四人もこの林に入った。じめじめしていてバブルスライムが多い。その点に注意しながら歩く。
 「ホントにバブルスライムが多いわね。みんな、気をつけてね、どくけしそうだってそういくつもないんだから」
 「わかってるって。ちゃんと下にバブルがいないか確かめながら進めばいいんだろ?」
 璃緒の言葉に緑崩が投げやりに返事を返す。しかし、本当の脅威は下ではなかった。
 「カイ君伏せて!」
 瑠奈が叫んだ。カイも異変に感づいて反射的にしゃがみこむ。
 カイの頭の上を炎が走る。メラである。
 続けざまにメラが飛んでくる。四人は木を壁にしてメラを防ぐ。
 「ひい、ふう、みい・・・左によつ」
 緑崩が敵の数を数えた。三時の方向に三人、正面やや右、一時の方向に一人の合計四人のまほうつかいだ。距離が遠いので直接攻撃はできない。近づくか、瑠奈の魔法に任せるかどちらかだろうと考える。いずれししても隠れているうちに、とピオリムをかけた。
 火線が飛ぶ中隙を見つけて瑠奈が顔を出した。三時の方向の敵をギラで一掃する。これで敵は残り一人である。
 どうだ、といわんばかりの顔をしている瑠奈だが、急に後ろにひっぱられた。その顔のすぐ目の前を火線が通り過ぎる。
 「ちゃんと周りを見てないと危ないって」
 瑠奈を抱えながら緑崩が言う。
 カイが走る。メラを撃ってできた隙を狙ったのだ。
 しかし、距離がありすぎた。まほうつかいはカイに向けてメラを放つ。
 カイはぎりぎりで木の陰に身を隠す。
 「勝った」
 そうカイがつぶやいたと同時に、璃緒がまほうつかいに向けてどうのつるぎを振り下ろした。なすすべもなく斬撃を叩き込まれるまほうつかい。まほうつかいは地面に倒れ伏した。
 まほうつかいをなんとかしりぞけた四人は再びいざないの洞くつに向けて歩き出した。
 「よぅし時間になった」
 緑崩が時計を見ながら言った。それを合図に車の扉が開かれた。三人とも車から降りた。
 「能登丼というのが食べられるみたいね。結構おいしそうだったじゃない」
 「楽しみだね~」
 三人は今幸ずしという店の前にいた。ガイドブックで読んでおいしそうだと瑠奈が希望した店だ。
 瑠奈は我先にと入り口の扉を引き、店に入った。璃緒と緑崩もそれに続く。
 店のおばちゃんがお茶を出してくれた。早速能登丼を注文する。ついでに鉄火巻きも頼んだ。
 能登丼というものは、能登の特産品を使用した丼につけられる総称だ。いくつかの明確な基準を元に作られたものが能登丼になる。つまり、色々な店で別々の能登丼があるのだ。勿論これは海鮮丼に限ったものではなく、牛などを使ったものなどもある。詳しくはわからないし、覚えていない。今回食べた幸ずしの能登丼はイカとカワハギの肝合え丼というもので、名前のとおりイカとカワハギがつかわれている。
 三人が雑談をして時間を潰していると、能登丼が運ばれてきた。イカとカワハギ、それぞれ一つずつの丼になっている。
 「おいしそ~!いただきま~す!」
 最初に来た能登丼を瑠奈は自分の前におくと、箸を取り出して食べ始めた。この箸も能登産のもので食べた後持って帰ってよいということだ。ちなみに、丼も能登産のものであるらしい。
 「あ、おいしぃ~」
 二つ目、三つ目も運ばれ、璃緒と緑崩も食べ始める。
 「イカの弾力がすごいわね」
 「カワハギもうまい。ただ、ちょっと柚子が強すぎるかなぁ。カワハギの味が飛んじゃう分だけ勿体無い気がする」
 「う~ん、幸せ~」
 「鉄火もきたから瑠奈食べてみぃ」
 醤油に少しつけてひたして瑠奈に食べさせた。
 「あ!おいしぃ~。普通の鉄火巻きとは比べ物にならないくらいおいしい」
 「そりゃ、まあ比べるのも失礼な話ね」
 「じゃあおれもいただくか。・・・・・・ん、おいしい。なにこれすごくおいしい。・・・あれだ、鉄火巻きをなめてたね。こんなにおいしいとは思わなかった」
 「そんなにおいしいの?私にも頂戴」

 少々値段は高かったが、十分満足した三人であった。
 「後200m進んだら右、右なんだから!」
 jamprojectの曲が流れる車内に声が響いた。声のトーンから推測するなら歳は10歳くらいだろうか。その声は助手席から聞こえてくる。しかし、声の主は助手席に座っている瑠奈からのものではない。瑠奈が手に持っているPSPから音が出ているのである。
 「右だって~」
 「右?」
 璃緒が聞き返した。
 「みゆきちが言ってるんだから右で間違いない!」
 PSPを抱えながら瑠奈が言った。ちなみに、PSPにはナビがインストールされていて、音声案内の声はみゆきちこと沢城みゆきである。このナビを使うために瑠奈は助手席にいるのである。
 そして運転席には璃緒が座っている。後部座席には緑崩がいる。璃緒は瑠奈と緑崩が運転をするのを嫌がっている。本人曰く寿命が縮むからとのことらしい。
 そうこうしているうちに車は目的地に着いた。車を降り海岸まで歩く。海岸に着くと三人の目の前に多きな岩山が見えた。見附島である。
 「大きいね~」
 「そうね。飛び石があって近くまで行けるということだけど・・・」
 「途中で切れてる気がする件」
 途中で切れてるのも気にせず進むと、やはり途中で行き止まりになった。それで諦めて来た道を引き返した。
 「潮が引いたら向こうまで渡れるのかしらね」
 「どうだろうな。まあ渡れなかったのは・・・仕方ないね」
 「ねえねえ、あれ見てあれ~」
 瑠奈が指差した先には鐘が設置してある。そして、その近くには観音像が置いてある。
 「えんむすびーち???」
 璃緒は書いてある文字を読み上げた。しきりに首をかしげている。
 「面白そうだからやってみようよ~。」
 「まあ待て瑠奈。やったら虚しくなるから止めておけ」
 「・・・・・・そうだね~」
 魔王と交戦した元兵士へのインタビュー
 ―あなたは魔王と戦われた部隊に所属していたということですが。
 「ああ、魔王討伐軍には小隊長として参加していた。結局、俺の部隊で生き残ったのは俺だけだったが・・・」
 ―魔王の第一印象はどうでしたか。
 「最初に見たときは・・・・・・はっきり言って勝てると思った。なにしろ見た目は細身の女性、東洋系の人間のようだった。こんなのが魔王なのか、と」
 ―なるほど。それで戦いを始めた。
 「ああ。おそらく他のやつらも簡単に片が付くと思ったんだろうな。確かに簡単に終わったが・・・結果は正反対だった。戦いが始まって・・・いや、戦いにすらならなかったな・・・すぐに魔法を放ってきやがった。それで何千が一瞬のうちに消えて・・・・・・やつは空に浮いて空から砲撃をしてきたんだ。その魔法の威力に各国の精鋭部隊といえど為す術などなく一瞬で葬られた。今でもあの白い衣を翻す魔王が目に焼きついているよ」
 ―その中であなたは生き残られた。
 「先制の一撃の後、魔法弾のようなものを連射してきてな。それに吹き飛ばされた味方と衝突して倒れたんだ。それで目を覚ましたら周りは死体の山だった。
 ―貴重なお話をありがとうございました。
 「こちらこそ、ありがとう。やつは普通に相手をして倒せるものじゃない、それを世界のみんなに知らせて欲しい」

 魔王討伐作戦に従軍した元兵士の話
 ―あなたは魔王討伐軍に参加されたということですが。
 「軍を三つに分けて進んでいたんです。しかし、私たちは進軍の途中で敵に遇い壊滅させられました。魔王の部下なのかと思われますが」
 ―どんな魔物だったのですか。
 「いえ、魔物ではありませんでした。長い金髪を二つに結って黒いつなぎのスーツに身を包んでいました。魔人なのかもしれませんね」
 ―出くわしたとき、どう思いましたか。
 「こんなことを言ってはおかしな話なのですが、綺麗な女性だなと思いました。しかし、すぐに脅威的な相手であると認識が変りましたね」
 ―実際に戦って、どう感じましたか。
 「戦いになんてなりませんでしたよ。彼女の速さに誰もついていけず、一万が壊滅する頃にはみなが退却を開始してました。空を舞い、斧のような武器を振り回す。それだけでどんどん味方がやられていきました」
 ―インタビューをお受けいただきありがとうございました。
 「こちらこそありがとうございました。彼女がいる限り、今の人間の力ではどうしようもない。そう思うほどの力でした」


 「・・・・・・これは・・・」
 読んでいた新聞を放り投げて瑠奈が言った。
 「勝てないね。こっちの魔王がいるとか聞いてないんだけど」
 「白い悪魔とその夫か。勝てるわけないな」
 「そ、そうなの?」
 「呂布に蟻が戦いを挑むようなもんだ」
 「・・・・・・無理ね」
 「じゃあ魔王討伐は諦めるか」
 「旅して観光しながら帰れる方法を探す、という方向でいきましょう」
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