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いわゆる一つの萌え要素の為の場所
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 太陽は燦々と輝き、アスファルトはその輝きを反射して黒光りしている。停止線はまばゆいばかりに真っ白に光り、私の体に光りを注ぎ込んでいる。それらの光り全てが悪意を持って私の体を焼いているかのようだ。幅広の麦藁帽子も太陽光の勝者こそ防げども、この暑い反射光までは防げない。そして時折吹く風も生暖かく、夏の暑い空気が体にまとわりつく。
 そんな暑い夏の一日だった。
 私、緑崩はこの熱気の中十字路の角で座っている。なぜ座っているのかといえば、無論バイトだからである。趣味でこんなところに座るようなやつがいるものか。そんなのは正気の沙汰じゃない。
 それにしても暑い。あまりの暑さに水筒の水も飲み尽くし、ペットボトルの凍らせた水は融けきっていない。あまりの暑さに汗を大量にかいてしまったのでスポーツドリンクが飲みたいところでもある。
 しかし、わざわざ看板を置いて自販機まで行くのも大変だ。じっと我慢するか、それとも手早く買って戻るか。
 さあどうしようか。

 「お~い」
 ん?後ろから声がした。なんだろうか。
 振り向いて見てみる。
 瑠奈だ。七分袖の白いワンピースを着て麦藁帽子をかぶっている。私の頭にあるものと同じものだ。これは物置から偶然見つかり、それ以後使っている。私のには風で飛ばされないように紐付き、瑠奈は大きなリボンをつけている。リボンの向きや結び目の大きさなどに瑠奈自身のこだわりがあるらしい。だが、聞いても理解できないので聞いたことはない。
 ワンピースについては今朝、「夏はやっぱり麦藁帽子に白いワンピースだよね~」などと言っていた。お前はおれか。
 「んーなんでこんなとこにいるんだ?」
 「たまたま通りかかった~。暑そうだね~」
 「そうか。ああ、とにかく暑いな。今日は思ったよりも厳しい」
 「暑いのにご苦労様~」
 「あ、瑠奈、丁度いい。向こうにある自販機で飲み物買ってきてくれ。スポーツドリンクがあったから」
 財布をかばんから出し手渡す。
 「ん~・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・瑠奈のも買っていいから」
 「わ~い、ありがと~。優しいな~」
 嬉々として自販機まで歩いていく瑠奈。
 それを見つめながら思わずつぶやいた。
 「はぁ・・・・・・白々しいやっちゃ」
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緑崩:「あ゛あ゛~あ゛ー~~~~」
璃緒:「何やってんのよ。小学生じゃあるまいし」
瑠奈:「いやいや璃緒ちゃん、扇風機に向かってあ~は決まりごとだよ~・・・・・・わたしも~」
緑崩:「あい、萌えのためにも是非やってもらわないと困るしね」
瑠奈:「アッー」
緑崩:「それ違う!そのアッーは違うから!!ウホッな意味になっちゃう!」
璃緒:「・・・・・・・・・・・・はぁ」
 浴室に入った。さすがにここで殺虫剤をまきたくはない。璃緒は殺虫剤をおいて新聞紙による打撃に専念する。この狭い浴室に三人も入れない。璃緒と私が前衛に出て、瑠奈は後詰に回ることとなった。
 「破邪滅撃×1っ!」
 私の一撃は捉えきれなかった。
 「そこっ!」
 ニュータイプが言いそうなセリフとともに放った璃緒の一撃で黒い悪魔の動きが止まった。
 「生きては・・・・・・いるようね」
 さすがの生命力だ。敵ながらあっぱれといったところか。
 璃緒がもう一度叩いて動かなくなったところでキッチンペーパーに屍骸を包んでゴミ箱にポイ。
 「これで一安心だね~。壁にいるのを見てびっくりしちゃったよぅ」
 「まあこの程度私たちにかかれば造作もないことね」
 「うむ。我らの連携と個々の能力、そして新聞紙と殺虫剤の前には敵ではないな」
 ウソだ。こうして向かい合って決戦すれば負けないが、やつらは奇襲を用い兵糧を掠め取るのだ。それに対抗するには決定打がなく、遭遇戦による撃退に終始せざるを得ないのが実情であった。決定打がない以上敵はじきに戦力を回復する。この戦いはそのイタチゴッコで終わらせることができない、永遠の戦いなのかもしれない。だが、いずれは人間の英知と武勇と忍耐によって勝利という果実を手にし、終戦させることができるのだと信じたい。
 「ええっと~・・・・・・そろそろ出て行ってもらいたいんだけど~・・・」
 気付いたら璃緒がいなかった。そして、隣には瑠奈。体にはバスタオルを巻いている。
 そういえば風呂から出たばかりで着替えてもいなかったのだ。悪魔との戦いですっかり忘れていた。
 「ああ、すまんかった。ちょっと考え事をしててな」
 と言って脱衣場を出た。
 もう黒い悪魔が出てくる時期になったのか。時間の経つのは早いものだなあ。今年の夏はどうしようか。
 脱衣場に入ると璃緒と瑠奈が一点を注視している。視線の先をみやると、壁にあの黒い悪魔がいた。
 二人に無言で、そして厳かに新聞紙を二つに折って渡す。二人の目も真剣だ。
 璃緒は右手に新聞紙。左手に殺虫剤を掴んでいる。
 瑠奈は右手に新聞紙を持ち、口を真一文字に閉じている。
 それを見て自分も新聞紙を構える。両手に一束ずつ持つ。左右どちらにも素早く反応するためだ。
 「いくわよ」
 璃緒がうごいた。狙いをつけて殺虫剤をかける。
 黒い悪魔が地面に墜落する。
 だが、この程度で死ぬようなやつではない。着地するとすかさず逃げようとする。
 「逃がすか!」
 洗濯機の下などに逃げられたら手出しができない。すばやく回り込んで新聞紙を叩きつける。
 ミスった。
 瑠奈も叩くがこれも避けられた。
 敵は誰もいない浴場へ走っていった。
 「ここまでは計算どおりだがな」
 「そうね。でも、油断すると仕留めそこなうわよ」
 「油断せずいこ~」
 最初の攻囲で倒せなくても逃げ場のない浴場へ誘導することで退路を断つ作戦なのだ。その策は成功し、敵はもう袋の中のネズミ状態だ。
 「窮鼠猫をかむ、というが」
 「虎は咬まれん。ばい呂布~」
 「それに、囲師は欠くべしとも言うけど・・・・・・咬まれる大きさでもないしね。殲滅戦が必要な時もあるのが現代という時代なのよ」
 「敵に出血を強要させるわけだな。よし、叩き潰そうか」
 瑠奈の悲鳴を聞いて浴室まで急ぐ。とはいえ走るほどの距離はない。璃緒が咲きに脱衣場に入った。
 すぐに出てきた。
 「緑崩はそこでストップ!」
 止められてしまった。
 「こら瑠奈!せめてバスタオルで隠すとかしなさい!!」
 脱衣場の中から声が聞こえてくる。ああそうか、風呂から出たばかりなのだ。着替えがすんでいるわけがない。だが、まあそれくらい自分で考えてくれとも思わなくもないのだが。
 「う~わかったよう・・・・・・」
 「・・・・・・気をつけような。絵的にR指定かかっちゃうからな」
 まあ絵などないので問題はないが、それでも自制はするべきだろう。
 「それで、なんだったの?」
 「あそこに・・・・・・」
 はい、今いかがわしいコト考えた人挙手。向こうの様子は当然ながら見えない。
 「ん?・・・・・・ああ、あれね」
 璃緒の声が急に低くなる。
 璃緒が出てきた。
 「緑崩はそっちから新聞紙取ってきて。瑠奈はその場で監視」
 そういうと璃緒は居間の方へ早足で歩いていった。
 新聞紙・・・・・・そういうことか。やつがきたのか。あの・・・
 ――あの黒い悪魔が。
 人間の宿敵にして最凶の蟲。単体の力こそ白い悪魔など他の悪魔たちには遠く及ばぬが、驚異的な生命力と探索困難なステルス性を持つ。そして爆発的な繁殖力ですぐにその数を増やし、人間の食料などを食べて害をもたらす。食物連鎖の鎖から脱却した人間の間隙を縫うようにその勢力を拡大してきた最悪の悪魔。
 今回はそんな黒い悪魔がたまたま単体で発見されたようだ。迂闊なことをしたものだ。いや、優れたステルス機能も偶然の遭遇には適わないということなのか。出てきた以上は黙って帰すわけにはいかない。その首を頂戴せねばならないのだ。
 すぐに古新聞紙を四つ持って脱衣場に戻る。新しい情報をもたらすはずの新聞も時間が経てばこのように強力な破邪の剣となるのだ。
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