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いわゆる一つの萌え要素の為の場所
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 店を出ようとしたらおばさんに呼び止められた。
 「そういや今夜コンサートがあるって知ってるかい?」
 顔を見合わせる。
 「いえ、初めて聞きました。どんな方のコンサートですか?」
 「ええっと、確か・・・・・・若い女の子だったはすだけど・・・・・・ああそうだ」
 「麻生だ?」
 「あそうだ?・・・雪の妖精だとかそんな触れ込みだったよ。あそこの広場でやるそうだ」
 「どうせやることもないし、見に行ってみない?」
 緑崩の提案に一同賛成する。
 「面白そうなので行ってみます。それではありがとうございました」
 「またいらっしゃい。おまけしてあげるから」
 店を出る。
 コンサート会場は広場ということで少し早いがそちらに向けて歩を進めた。
 「こういったコンサートとかってのはよくあるの?」
 璃緒が尋ねる。
 「珍しいな。各国の関係が悪くなって、魔王もいるからな。旅をするやつなんか稀だ。劇団や流れの芸人なんかは激減してるんじゃないか。商人はそれほど減ってないらしいが」
 商人には魔王も魔物も怖くはないらしい。とカイはため息混じりに言う。
 「どこの世界でも商人はたくましいな」
 「とはいえアリアハンは大陸国家だから他所からは滅多に来ないな。旅の扉が封鎖されてるし船は遠いから殆ど来れないからな」
 話しながら歩いていると、広場の近くまで来た。そこで瑠奈が何かを発見した。
 「あれなんだろ~。穴?」
 瑠奈が指差した先の地面に直径1メートルほどの穴が開いていた。
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 四人はアリアハン城の地下通路を通ってアリアハンの城下町に戻った。
 軽くご飯を食べた。まだ日もそれほど傾いてはいない時刻だ。宿屋はもう部屋を取ってあるが、帰って寝るにはまだ早いだろう。しかし、狩りをして経験値と資金を稼ぐことはできない。瑠奈のMPが殆ど尽きているからだ。
 だから、日が落ちるまで散策をすることにした。
 最初に入ったのは服の店だった。アリアハンには絹や綿はないが、麻布の服や毛皮製の衣類が多い。カイ以外の三人は元々持っている服が一着で、買い足すお金も十分になくこれまで来たので、この機会にとあれこれと見て回った。
 「やっぱりこっちの服は違うわねー」
 「古代にありそうな服って感じだな。とは言ってもなかなか作りがきれいだが」
 「みてみて~、どう?」
 「いいわね、似合ってるじゃない」
 「コスプレしてるように見えるけどなw」
 「三人とも物珍しそうだな」
 「まあ、日本でこんなのなかなか着れないからな」
 「日本というと、三人が住んでたとこだったか」
 「そうそう。・・・・・・お、これ涼しそうだ」
 「カイは大体買うもの決まった?」
 「ん?ああ、俺は今ある分だけでも十分だからな」
 「わたしももういいよ~」
 「おれも大体おk」
 「そう、じゃあ清算しましょうか。お姉さん幾らですか?」
 璃緒が店のおばさんにそう話しかける。気分をよくしたおばさんに端数をおまけしてもらった。
 「わしは幾度となく鍵を渡す夢を見ていた」
 四人が階段をあがりきると、部屋にいた老人がいきなり話し始めた。
 「ぼけてるのかな~?」
 カイと璃緒の影で瑠奈が緑崩に向かってぼそりと言った。それに対して緑崩はこらこらと苦笑交じりにつぶやく。
 「鍵を渡す夢を見ていた。じゃが、それはお前たちにではない。オルテガのせがれにじゃ」
 老人は静かにそう言った。
 緑崩はため息をついた。塔に登る前から懸念していたことではあった。本来本物の勇者に渡されるべき鍵を自分たちに渡してくれるだろうか。その懸念が現実のものとなったのだ。
 渡してもらえないならば仕方がない。
 「いい眺めですねーここは」
 璃緒が老人に話しかけた。唐突に景色の話をされて面食らったようだ。
 「ん?まあそうじゃな。わし意外は滅多に見れんが絶景じゃの」
 かっかっかと笑う老人に璃緒が言う。
 「でしょうね。魔物もいてなかなかここまで来られる方はいらっしゃいませんでしょうね」
 「そのおかげで静かに暮らせとるわい。滅多に誰も来ないのは寂しい時もあるがな」
 「そうでしょうね。人がまずこないので、おじいさんに何かあっても誰も気付かないことになってしまいますし、病気や怪我なんかされたら大変でしょう」
 「んん?ま、まあそうじゃが」
 「病気になったり魔物に襲われたりしたら助けてくれる人がいないのは危ないですね」
 「な、何が言いたい?」
 「話が戻りますが、バコタが持っていたという鍵、あれをコピーでいいのでいただけませんか?」
 そう言いながら璃緒は腰につるしたどうのつるぎの柄に手をおいた。
 同時に緑崩がしまったままのこんぼうのグリップを持つ。
 「わしを脅そうというのか!?」
 「私たちは決して脅そうなんて思っておりません。無理なお願いだと承知してますから無理なら無理と言って下さってかまいません。コピーでかまわないので鍵をいただけませんか?」
 緑崩が後ろから言った。
 「コピーならばなくなっても大丈夫でしょう。所詮模造品、また作ればいいわけですから。二度と作れないものならばそうはいかないのですから」
 「ちぃっ。持ってけ」
 老人は引き出しから鍵を取り出すと、璃緒に向かって放り投げた。
 「ありがとうございます。無理なお願いをお聞きいただき感謝してもしきれません」
 「は、無理を聞けなければ無理をするつもりじゃったんじゃろう。コピーくらいくれてやる」
 「けしてそんなことは・・・・・・お礼と言ってはなんですが、城下町で買ってきた干し肉とお酒ですがもらって下さいませんか。いいやつを選んできたので」
 こうして四人は無事に盗賊の鍵(コピー)を手に入れた。
 「ふう、疲れるねぇ」
 ナジミの塔三階への階段を登りながら緑崩が言った。ミサキの洞くつから魔物と戦いながら進んでいるので、少しずつ疲労がたまってきている。
 何故か地下一階に宿屋があるのを発見して、そこで少し休もうかという話にもなったが、瑠奈の「休憩っていうのもね~」との一言でなしになった。カイは怪訝そうな顔をしていたが、璃緒と緑崩の二人は立ち去ることを主張した。
 「確かもうちょっとなんだから頑張りなさい」
 緑崩、瑠奈はマップを大雑把にではあるが思い起こすことができた。璃緒は外から見て大体何階程度か把握しているので、もう少しだとわかっている。カイも塔の構造を知っているようだ。途中宝箱をとりながらそれほど迷わずに進んでいる。
 「今のところなんとかなってるね~。どくけしそうもバブルスライムから見つけたし、あまり心配はないかな~」
 途中で瑠奈がギラを覚えたこともありナジミの塔攻略は順調に進んだ。カイが最前線で敵と戦い、カイを中心に璃緒が位置を変えながら攻撃する。後ろから緑崩が隙を見て攻撃し、瑠奈が最後方から魔法で攻撃を加える。敵が強くないこともあってある程度パーティが有機的に働いているようだ。どくけしそうを持ってこなかったというミスもバブルスライムが落としたことによって問題にならなくなった。
 そして四階への階段の前まできた。
 「じいさんが住んでるのはこの上だ。だが、そのじいさんになんか用でもあるのか?」
 カイはナジミの塔に登る理由を知らない。誰も言わなかったのだ。カイは訓練程度に丁度いいと思い深く言及はしてこなかったが、ここに来てようやく理由を尋ねた。璃緒が代表して答える。
 「盗賊の鍵をもらいにね。彼から鍵をもらわなきゃ色々と不都合があるのよ」
 「盗賊の鍵?ああ、バコタって盗賊があのじいさんに捕まったって話しを聞いたことがあるが、バコタの鍵をあのじいさんが持ってるってことか?」
 「ご明察。そういうことだ。それじゃじいさんに鍵をもらいに行くか」
 「お~」
 洞くつは入ってしばらく下り勾配が続く。敵の気配を感じないのでみな落ち着いている。下りきったら道がU字になっている。
 道幅が広くなった。横幅も高さもある。オオガラスが飛んでいられるほどだ。
 飛び掛ってくるオオガラスを焼き見つけたスライムを切り払って四人は進む。いっかくうさぎも相手にならない。
 道が分かれたので左側の道に進む。これは瑠奈の勘である。次の分かれ道も左に行き階段をみつけた。
 「階段?なんで洞くつに階段なんてあるのよ?」
 璃緒の独り言のような疑問にカイが答える。
 「岬の洞くつにつながるように以前アリアハンが造ったんだよ。城から洞くつと、レーベの村のほうまでな」
 「へえ。そうなの」
 「そっか~。それでアリアハンやレーベにつながってたんだね~」
 「レーベから城に敵に気付かれず救援にいけるように、か。逆もまた然りで」
 「それもあるだろうが、一番は王族が逃げられるためだろうな。小さな大陸だから逃げ場があるとも思えないが」
 階段を上ると緑色の壁で左右は覆われ、下は石畳が敷き詰められている。四人は道なりに歩き三叉路まできた。上り階段もみえる。
 「この階段上るとナジミの塔だったな」
 「そうだよ~」
 「この洞くつとナジミの塔がつながってる・・・」
 「そうだが、どうかしたか?」
 カイが聞く。
 「ナジミの、なんて名前で呼ばれてるわりには軍事目的で造られてるんじゃない。カイ、ナジミの塔は侵入者を防ぐ罠とかってあるの?」
 「そういうことか。罠なんかはないな。もう殆ど軍が入ることはないからな。それで魔物が住み着くようになってるくらいだ」
 入ってくるのは冒険者くらいだな、そう付け足した。そう、わかったと璃緒が言う。
 「私たちもそのうちね。じゃあ行きましょうか」
 おおーと緑崩と瑠奈が朗らかに言い、階段を上がっていった。
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