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おばけありくいとフロッガーを退けた四人は階段を目指し進んだ。亀裂を避け、右に曲がり階段を目指す。曲がる時は必ず先に敵がいないかを確認する。その時にも後ろから魔物が来ないかも確かめる。
更に進み曲がり角に行き着く。 カイが曲がり角の先を注視する。敵はいない。
「OK、大丈夫だ」
敵がいないことを確認して先に進む。次の突き当りを右で階段にたどり着く。
しかし、突如として敵が現れる。
まほうつかいである。まほうつかいが二人突き当りの裏から姿を現した。
まほうつかいはメラを唱えた。
二つの火炎が先頭のカイに襲いかかる。
「くっ!」
慌ててかわのたてで防ぐ。
「一旦下がるわよ!」
このままでは狙い撃ちである。四人は先ほど曲がった角に逃げ込んだ。
壁を盾にして瑠奈とまほうつかい二人とのにらみ合いが始まった。お互いに出たら撃たれるため身動きが取れない。瑠奈を見張りにして、璃緒たちは作戦会議をした。
「さて、どうしよう。これじゃ身動きが取れない」
「ええと、少なくとも相手に出てきてもらうか、こちらから出て行かないとどうにもならないわね」
「それが簡単にできたら苦労はしないんだがな」
「ん~・・・・・・タメージ覚悟で突っ込むか」
「それしかないだろうな」
「だよなぁ。・・・・・・んじゃ、言いだしっぺだしまあ突っ込むわ。自分でホイミもできるし」
「いや、やるなら俺がやろう。俺のほうが適任だ」
「まあそうだわな。・・・んじゃすぐ治してあげるからよろしく頼んだ」
「任せておけ」
「よろしくね。・・・ああ、緑崩、これ」
作戦と配役が決まり準備に着く。
「みんな準備はいいわね。じゃあ、行くわよ!瑠奈、やって」
瑠奈はメラを唱えた。
火球がまほうつかいに向かって飛ぶ。
それを合図にカイが飛び出す。
メラが壁に阻まれ燃え尽きた。直後まほうつかいが手を出しメラを唱える。
二つの炎がカイを襲った。
「ちぃっ」
かわのたてで防ぐが完全には防ぎきれずその場に立ち尽くす。
その後ろから璃緒、緑崩が突撃をかける。まほうつかいも再度メラを唱えようとする。
璃緒と緑崩は走りながら瓦礫を投げつけた。魔法を唱える間もなく瓦礫を避けるまほうつかい。
更に間をつめる璃緒と緑崩。それに合わせて後方から瑠奈がメラを唱える。まほうつかいは再度壁の裏に逃げ込んだ。
璃緒と緑崩が曲がり角に到着した。緑崩が角を曲がる。
「ダメ!」
璃緒が叫んだが、間に合わなかった。緑崩にメラが二発直撃した。
「この!」
璃緒が距離を詰める。
あっという間に詰め寄られまほうつかいたちはその場に倒れこんだ。
「緑崩!大丈夫!?」
「な・・・なんとか」
緑崩は倒れこんだまま自分にホイミをかけて治した。その後、起き上がってカイにもホイミをかける。
「いやぁ、今回の敵は苦戦したなぁ。まほうつかい二匹にメラを総計四発か。やっぱり地の利というものがいかに大事かってわかるね」
緑崩が仰々しく言った。それに答えて璃緒が言う。
「そうね。地の利は大事ね。迂闊に敵に近づかないことと同じくらいに、ね」
「あう・・・」
四人はいざないの洞くつに入った。人の手が長く入っていない洞くつではあったが、それほど魔物はいなかった。しかし、洞くつの床はところどころ抜け落ちておりそれが大きな穴になっているところもあった。その為大きく迂回しながら進まねばならない。
「あの階段までが遠いわね・・・」
すぐのところにある階段に行くのに迂回せねばならない。迂回できる場所を探すだけで苦労すると思われたが、幸い緑崩と瑠奈が道順を覚えていたので比較的スムーズに正解の道筋を進むことができた。
ぐるぐると迂回する。ところどころ亀裂が入っていたり穴が開いていたりするので気をつけなければならない。
曲がり角を曲がると、おばけありくいがあらわれた。狭い通路に三匹だ。
おばけありくいとはアリアハン大陸最強の生物である。しかし、レベルがあがり、連携も徐々に取れてきた四人の敵ではなかった。瑠奈のメラを援護にカイと璃緒が接近戦で叩く。あっという間に三匹全て片付けた。
「これくらいなら敵じゃないな」
「ここまではね。ロマリアにはあいつがいるから気をつけないと・・・・・・ん?瑠奈!後ろ!」
璃緒の言葉に全員が振り返る。後ろからフロッガーが迫ってきていた。壁の死角となって発見が遅れたのだ。
接近戦が苦手な瑠奈は前に逃げる。
迫るフロッガー。
前に走る瑠奈とすれ違うように緑崩がフロッガー目掛けて駆ける。
こんぼうが地面と水平に振られた。
身をよじって避けるフロッガー。
「もらった!」
フォロースルーのままこんぼうを置いた緑崩はフロッガーに突っ込み突き飛ばした。
後ろに突き飛ばされるフロッガー。
「落ちてろ!」
踏みとどまろうとするフロッガーにもう一度突っ込んで突き飛ばす。
床の裂け目に落ちるフロッガー。
下からべちゃ、というイヤな音がした。
「ふう、危なかった。・・・・・・さ、進もうか」
四人はいざないの洞くつの更に奥深くへと進んだ。
「ようやく着いたわね」
「ああ、そうだな」
「いや、まあ一回来てるんだけど」
「それでも、なんかようやくアリアハン脱出って感じだよ~」
思い思いに感想を述べながら遠くアリアハンのある方向を見る。一年以上住みつづけたアリアハンの街に愛着のあるカイ。そして、こちらへ来て以来ずっと生活の拠点にしてきた璃緒たち三人。それぞれがそれぞれの思い入れがあった。
「う~ん、長かったように思えたんだけど、よく考えると二週間くらいしかいなかったんだよなぁ」
「そうだね~。一日一日の密度が濃かったから長く感じるんだよね~」
「色々あったからね」
「そうだなぁ・・・ゆきぽに会い、スライムと戦い、魔法の玉を作り、ホントに濃い二週間だったなぁ。最近こんなに一日が濃密なことなんてなかったからなぁ。それで長く感じたんだろう」
「おまえらと会ってからまだ二週間か。まあなんだかすっかり馴染んでそんなに日が浅いという感じがしないな」
「そうね。カイとももうすっかり打ち解けたし、連携もよくなってきてるわね」
「三人で戦ってた時から考えれば段違いだからなぁ。なんだか元々この四人で戦うためにみんなの能力が決まってたみたいだ」
ふいに沈黙が流れる。みな、言葉に出さずに理解しあった。
沈黙を破って璃緒が口を開いた。
「これで当分アリアハンとはお別れね」
「二週間いて愛着もあるが、まあこれが旅そのものだからなぁ」
「何知った気になって言ってるのよ。まだまだ始まったばかりよ」
一方、アリアハンのとある旅の宿。
「二階の四人組は今日出発か。彼らの旅が無事に続きますように」
赤字ギリギリの値段でやってるこの宿屋において、四人が二週間に渡って滞在してくれたことは大きかった。その客がいなくなることは痛手だが、と思いながらも主人は四人の旅の無事を願った。
「そんなことよりも、だ」
ふいに受付から立ち上がると二階に上がった。
そして、部屋にいる息子に対して声をかける。
「おい、お前はまだ学校へ行く気にはならないのか?」
努めて優しく諭すような声で言った。半ば諦めているのだが、親としてわが子を見捨てるわけにはいかない。学校に行かずともよいと思わなくもないが、せめて義務教育くらいは通ったほうがよいかと思い、毎日声をかけ外に出ることを促すことを続けている。
部屋からなんの返答もないので、諦めてもとの場所に戻る。まあ、その内なんとかなるだろう、そう思うようにして頭を切り替える主人であった。
アリアハン東部の丘陵地はアップダウンが激しい。丘を登り丘を下り、長々と道が続く。昨今は人があまり訪れることがないため、そこに自生している草木が自由にその根を伸ばし、葉をひろげている。その為この辺りを訪れるものは足元の草に足を絡めとられ、歩くのに難渋する。また、生い茂る草は小さなバブルスライムの身を隠し、気付かずに毒に冒されるという危険が付きまとうことになる。いざないの洞くつへ向かう者が今まで現れなかったのは、鎖国政策によって築かれた壁だけでなく、この天然の防壁に因るところも大きいのであった。
この丘陵地には時々林のように木々が生い茂っている箇所がある。視界が悪く、大人数での行動が制限されるため、アリアハン東部の難所となっている。かつて旅の途中で力尽きた商人や旅人たちの多くがこういった林で魔物の奇襲を受け、その命を失った。
四人もこの林に入った。じめじめしていてバブルスライムが多い。その点に注意しながら歩く。
「ホントにバブルスライムが多いわね。みんな、気をつけてね、どくけしそうだってそういくつもないんだから」
「わかってるって。ちゃんと下にバブルがいないか確かめながら進めばいいんだろ?」
璃緒の言葉に緑崩が投げやりに返事を返す。しかし、本当の脅威は下ではなかった。
「カイ君伏せて!」
瑠奈が叫んだ。カイも異変に感づいて反射的にしゃがみこむ。
カイの頭の上を炎が走る。メラである。
続けざまにメラが飛んでくる。四人は木を壁にしてメラを防ぐ。
「ひい、ふう、みい・・・左によつ」
緑崩が敵の数を数えた。三時の方向に三人、正面やや右、一時の方向に一人の合計四人のまほうつかいだ。距離が遠いので直接攻撃はできない。近づくか、瑠奈の魔法に任せるかどちらかだろうと考える。いずれししても隠れているうちに、とピオリムをかけた。
火線が飛ぶ中隙を見つけて瑠奈が顔を出した。三時の方向の敵をギラで一掃する。これで敵は残り一人である。
どうだ、といわんばかりの顔をしている瑠奈だが、急に後ろにひっぱられた。その顔のすぐ目の前を火線が通り過ぎる。
「ちゃんと周りを見てないと危ないって」
瑠奈を抱えながら緑崩が言う。
カイが走る。メラを撃ってできた隙を狙ったのだ。
しかし、距離がありすぎた。まほうつかいはカイに向けてメラを放つ。
カイはぎりぎりで木の陰に身を隠す。
「勝った」
そうカイがつぶやいたと同時に、璃緒がまほうつかいに向けてどうのつるぎを振り下ろした。なすすべもなく斬撃を叩き込まれるまほうつかい。まほうつかいは地面に倒れ伏した。
まほうつかいをなんとかしりぞけた四人は再びいざないの洞くつに向けて歩き出した。
―あなたは魔王と戦われた部隊に所属していたということですが。
「ああ、魔王討伐軍には小隊長として参加していた。結局、俺の部隊で生き残ったのは俺だけだったが・・・」
―魔王の第一印象はどうでしたか。
「最初に見たときは・・・・・・はっきり言って勝てると思った。なにしろ見た目は細身の女性、東洋系の人間のようだった。こんなのが魔王なのか、と」
―なるほど。それで戦いを始めた。
「ああ。おそらく他のやつらも簡単に片が付くと思ったんだろうな。確かに簡単に終わったが・・・結果は正反対だった。戦いが始まって・・・いや、戦いにすらならなかったな・・・すぐに魔法を放ってきやがった。それで何千が一瞬のうちに消えて・・・・・・やつは空に浮いて空から砲撃をしてきたんだ。その魔法の威力に各国の精鋭部隊といえど為す術などなく一瞬で葬られた。今でもあの白い衣を翻す魔王が目に焼きついているよ」
―その中であなたは生き残られた。
「先制の一撃の後、魔法弾のようなものを連射してきてな。それに吹き飛ばされた味方と衝突して倒れたんだ。それで目を覚ましたら周りは死体の山だった。
―貴重なお話をありがとうございました。
「こちらこそ、ありがとう。やつは普通に相手をして倒せるものじゃない、それを世界のみんなに知らせて欲しい」
魔王討伐作戦に従軍した元兵士の話
―あなたは魔王討伐軍に参加されたということですが。
「軍を三つに分けて進んでいたんです。しかし、私たちは進軍の途中で敵に遇い壊滅させられました。魔王の部下なのかと思われますが」
―どんな魔物だったのですか。
「いえ、魔物ではありませんでした。長い金髪を二つに結って黒いつなぎのスーツに身を包んでいました。魔人なのかもしれませんね」
―出くわしたとき、どう思いましたか。
「こんなことを言ってはおかしな話なのですが、綺麗な女性だなと思いました。しかし、すぐに脅威的な相手であると認識が変りましたね」
―実際に戦って、どう感じましたか。
「戦いになんてなりませんでしたよ。彼女の速さに誰もついていけず、一万が壊滅する頃にはみなが退却を開始してました。空を舞い、斧のような武器を振り回す。それだけでどんどん味方がやられていきました」
―インタビューをお受けいただきありがとうございました。
「こちらこそありがとうございました。彼女がいる限り、今の人間の力ではどうしようもない。そう思うほどの力でした」
「・・・・・・これは・・・」
読んでいた新聞を放り投げて瑠奈が言った。
「勝てないね。こっちの魔王がいるとか聞いてないんだけど」
「白い悪魔とその夫か。勝てるわけないな」
「そ、そうなの?」
「呂布に蟻が戦いを挑むようなもんだ」
「・・・・・・無理ね」
「じゃあ魔王討伐は諦めるか」
「旅して観光しながら帰れる方法を探す、という方向でいきましょう」