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いわゆる一つの萌え要素の為の場所
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 「腕は大丈夫?」
 緑崩に向かって璃緒が聞いた。先ほどの戦闘でオオガラスの爪で怪我を負っている。
 「大丈夫じゃない」
 緑崩は素直に答えた。筋まで切れてはいないが、血管は数本切れてそうだ。だからといって死ぬほどの大怪我とまではいかないが、痛いことこの上ない。野球をしていたころでもこれほどの傷を負ったことはなかった。
 「でも」
 左手を傷口にあてた。
 傷口が淡い光りに包まれてふさがっていく。
 「ホイミだ~」
 瑠奈が言った。
 「ホイミ・・・回復ができるのね。治っていくのを見るのは不思議な感じがするけれど・・・・・・」
 ふさがっていく傷口を見ながら璃緒は言った。更に顔を上げて、
 「私だけ何も使えないみたいね」
 「ん~さっきみたいにキックがあるじゃん~」
 「物理的な暴力だな」
 「あれくらいたいしたことじゃないわよ。でも。瑠奈も緑崩もあんなことどうやってやったの?なにかやり方が?」
 「いやぁ・・・・・・勘?」
 「なんとなくこんな感じで火が出るかな~って~」
 こいつらは全く要領を得ない。適当にやってあんなことができるのか。璃緒は思った。
 「まあいいわ。できないことを考えても仕方ない。さ、これからどうしようか」
 「んっと、あっちに橋があって、ここがアリアハンの近くだとするならば、おそらく橋の向こうにアリアハンがあって向こうに行くとレーベだと思う。
 「そんなことわかるの?」
 いぶかしんで聞いた。緑崩が方向音痴だということくらいわかっている。不安で仕方が無い。
 「アリアハンは山と川に囲まれてて、森はこれほどないと思う。だからここはアリアハンとレーベの中間点くらいの場所だと思う」
 あっちの森の奥はおそらくなんとかって洞窟だったな。そう付け足した。
 「そう。なら橋を越えてアリアハンに向かいましょう。素手でいっかくうさぎたちは相手にしたくない」
 「それが安全だな。じゃあアリアハンに向かいますか」
 「お~」
 三人は橋を越えてアリアハンに向かった。
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 オオガラスが迫ってくるのをみて、緑崩は思わず腕をあげた。
 腕に爪が食い込む。
 「ちぃっ!」
 右腕をやられたようだ。右腕が熱く痛む。
 「人間様をなめるなぁっ!」
 無事な左腕で頸をつかみ、刺さった爪を引き抜く。自由になった右腕で頭をつかみ、頸をへし折ろうとした。
 バサバサバサ
 翼をばたつかせ抵抗する。
 「しまったっ」
 それに負けて手を離してしまった。飛んで上空まで逃れるオオガラス。
 「緑崩!大丈夫?!」
 右腕は大丈夫じゃない。そう言おうと口を開き―
 「このっ、このっ」
 かけたところで瑠奈だ声を上げた。突進してきたスライムを踏みつけようとしているようだ。だが、あちらもギリギリでかわしている。
 「そういうのわね、瑠奈」
 璃緒がそっとつぶやいた。
 「こうしたほうが早いのよ!」
 助走をつけ思い切り蹴った。インサイドで。
 ぽーんと飛んでいくスライム。こころなしかカーブの軌道を描いているように見える。
 10メートルを越えたくらいで落ちた。ワンバウンドして停止。そしてスライムは完全に動きを止めた。
 「ナイスキック!」
 bっと爽やかに親指を突き上げて讃える。もちろん右腕が使えないので左腕でだ。
 「すご~い、璃緒ちゃん」
 瑠奈はぱちぱちと拍手をした。
 「後は・・・・・・上かしら」
 上空に逃れたオオガラスがこちらを窺っている。
 「えい~」
 火炎が飛んだ。オオガラスは火炎の直撃を受け、羽ばたく力を失った。撃墜され落ちていくオオガラスを、緑崩と璃緒は呆然と眺めるだけだった。
 引っ張られる力を感じなくなり、目を開けた。
 「ええっと・・・ここは?」
 地面に寝転がっている。体を起こして周りを見渡した。近くに璃緒と瑠奈がいる。
 「んんん・・・よっと」
 「ん~」
 璃緒は起き上がり、瑠奈は転がったまま目を開けた。どちらも無事なようだ。
 「で、ここは?」
 璃緒が瑠奈を見下ろして聞いた。
 「さぁ~?」
 「『さぁ~?』じゃないわよ!」
 「少なくとも、我が家ではないな」
 「そんなこと見ればわかるわよ」
 ジト目で見られた。
 とりあえずまわりを見渡してみる。左右は森が見える。後ろには砂丘。右手前には海だろうか、波が立っているのがわかる。前には橋があるみたいだが、それより向こうは見えない。
 「とりあえず、どっちへ行こう?」
 「そうね、こんなとこで座ってても仕方ないし・・・でも、ここは少なくとも日本じゃ、ないわね」
 「そうだね~。少なくとも時限か世界は違うわけだし~」
 「そうなのか?まあこれだけ周囲に建物がないなんて、少なくとも日本じゃないな。シンガポールとか都市国家でもないだろう。あまり発展してないとこ」
 これは、民家がないだけではなく、海辺に店らしいものがないことからもわかる。海の近くに何もないなんて日本じゃ滅多にないだろう。
 と話していると、大きな鳥が見えた。
 こちらに向かってくる。黒い。
 「カラス?」
 そして地面では草むらの影で何かが動いた。青い物体で、柔らかい動きをしている。
 姿を現した。顔があり、頭の上に突起がある。
 「スライム?」
 どうやらここはドラクエの世界らしい、と思い立ったと同時に、カラス―大ガラスだろう―が爪を立てて襲い掛かってきた。
 「ね~ね~二次元に行く方法があるんだけどさ~。一緒に行かない~?」
 ドラクエⅢをプレイ中の私の後ろでそんなことを言い出した。いきなり何言い出すんだこの娘は。画面から目を離さないまま言った。
 「確か前にどっかのスレでそんなのあったなぁ。でもホントに行けたらとっくに誰か行ってるよ」
 もちろん、二次元に行けば必ず幸せになれるわけでもないだろう。だが、行けるならば行ってみたいとは思う。とはいえ次元を跳躍することなんかできるわけがない。
 「いやいや~わたしが研究に研究を重ねた結果の結論だから大丈夫だよ~」
 「そもそもそんなん研究するな」
 「普通研究するでしょ~ふつ~」
 するのか?・・・いや、しない。しないよな?普通は。でもまあこいつは普通じゃないか。普通じゃない者の言う普通は普通の人が言う普通とは異なるんだろう。
 「というか現実的に考えてそんなこと無理だろう?まあ実験するなら付き合ってやってもいい」
 無理に決まってる。と、思っていた。いや、普通思うだろう。だが、この娘、瑠奈は普通じゃなかった。
 「よし、じゃあ行こ~」
 「ん?二人でどっか行くの?」
 丁度外から帰ってきた璃緒が尋ねた。二次元に行くなんて恥ずかしくて言えないな。どうごまかそうか。
 「ちょっと二次元行ってくる~」
 「二次元?また変ったところに行くわねぇ」
 あっけらかんと二次元に行くと言っちゃう瑠奈とそれにたいしてつっこまない璃緒。こいつら・・・・・・できる。
 「そだ、璃緒ちゃんも一緒に行こうよ~」
 「え?う~ん、とりあえず、どうやって行くの?」
 冗談にマジレスされ戸惑う璃緒。瑠奈のほうが一枚上手か?
 「じゃあみててね~。まあ二次元って言っても、別の世界に行くだけなんだけど・・・・・・これをこうやって、こうして・・・・・・」
 手際よく何か作業をしている。何をしているのかはさっぱりわからないが、かなり慣れた手つきだということはわかる。
 「・・・・・・よし、これで完成。じゃあ行くよ~」
 「え?うん、行こう・・・?」
 「おk。別世界とやらに行ってみようか」
 もちろんことここに到っても全く信じていなかった。
 「しゅっぱ~つ」
 私たち三人の体が淡い光りにつつまれた。って、一体何が起こってるんだ?さっぱりわからん。
 とまともに思考できたのはそこまでだった。強力な吸引力に吸い寄せられるかのように体が引っ張られた。
 「「ぅうわぁああああぁぁぁ・・・・・・」」
 そして、誰もいなくなった。
 太陽は燦々と輝き、アスファルトはその輝きを反射して黒光りしている。停止線はまばゆいばかりに真っ白に光り、私の体に光りを注ぎ込んでいる。それらの光り全てが悪意を持って私の体を焼いているかのようだ。幅広の麦藁帽子も太陽光の勝者こそ防げども、この暑い反射光までは防げない。そして時折吹く風も生暖かく、夏の暑い空気が体にまとわりつく。
 そんな暑い夏の一日だった。
 私、緑崩はこの熱気の中十字路の角で座っている。なぜ座っているのかといえば、無論バイトだからである。趣味でこんなところに座るようなやつがいるものか。そんなのは正気の沙汰じゃない。
 それにしても暑い。あまりの暑さに水筒の水も飲み尽くし、ペットボトルの凍らせた水は融けきっていない。あまりの暑さに汗を大量にかいてしまったのでスポーツドリンクが飲みたいところでもある。
 しかし、わざわざ看板を置いて自販機まで行くのも大変だ。じっと我慢するか、それとも手早く買って戻るか。
 さあどうしようか。

 「お~い」
 ん?後ろから声がした。なんだろうか。
 振り向いて見てみる。
 瑠奈だ。七分袖の白いワンピースを着て麦藁帽子をかぶっている。私の頭にあるものと同じものだ。これは物置から偶然見つかり、それ以後使っている。私のには風で飛ばされないように紐付き、瑠奈は大きなリボンをつけている。リボンの向きや結び目の大きさなどに瑠奈自身のこだわりがあるらしい。だが、聞いても理解できないので聞いたことはない。
 ワンピースについては今朝、「夏はやっぱり麦藁帽子に白いワンピースだよね~」などと言っていた。お前はおれか。
 「んーなんでこんなとこにいるんだ?」
 「たまたま通りかかった~。暑そうだね~」
 「そうか。ああ、とにかく暑いな。今日は思ったよりも厳しい」
 「暑いのにご苦労様~」
 「あ、瑠奈、丁度いい。向こうにある自販機で飲み物買ってきてくれ。スポーツドリンクがあったから」
 財布をかばんから出し手渡す。
 「ん~・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・瑠奈のも買っていいから」
 「わ~い、ありがと~。優しいな~」
 嬉々として自販機まで歩いていく瑠奈。
 それを見つめながら思わずつぶやいた。
 「はぁ・・・・・・白々しいやっちゃ」
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